下郷農業協同組合(大分県中津市耶馬渓町)は、農地解放によって自分たちの農地を持つことが出来た小作人だった人たちによって、1948年(昭和23年)に設立されました。その後、1952年(昭和27年)に、長野県伊那地方の若者25人が開拓団として鎌城(かまぎ)地区に入植し、下郷農協の組合員となりました。そして、やせた土地を開墾するために乳牛を飼育し、堆肥を活用しつつ、乳牛を増やして酪農を開始し、搾乳した生乳を乳業メーカーへ販売していました。
しかし、販売する際の価格交渉で辛い思いをしていました。乳業メーカーをかえても、価格交渉で安く買われることになっていました。そこで、「生乳を乳業メーカーに販売しても未来がない。自分たちで牛乳を作って販売しよう」と考え、下郷農協で牛乳工場(当時、びん牛乳)を建設し、成分無調整の牛乳の生産を開始しました。
生産した牛乳を都市で働く地元出身者へ届けるため、北九州市などの工場へ配達を始めました。すると「おいしい」という評判が広がり、利用者が増えていきました。そして「野菜やたまごなども配達してほしい」との要望を受け、牛乳以外の商品も配達することとなりました。
「農協が農村の農産物を都市の消費者に販売し、都市の消費者は農村(農協)の生産者と交流する」。
下郷農協は日本で初めて、生産者と消費者の「産直共同購入事業」を創り出した農協です。