ブレずに「良い飼料で、健やかに育てる」
−酪農家が抱く、未来への展望−

脇坂牧場 │ 脇坂伸彦さん
脇坂牧場 │ 脇坂伸彦さん

大分県中津市・耶馬渓やばけい。この地で酪農が行われるようになったのは、約70年前のことです。当時、ここにを開拓し試行錯誤を重ねながら牧場をはじめたのは、新天地を求めてやってきた長野県からの入植者たち。グリーンコープと協力関係を結び、株式会社耶馬溪ファームのメンバーとなった脇坂伸彦さんの祖父母も、そんな入植者の一人でした。

「牛たちが暮らす牛舎は、40年ほど前に建てられたもの。その頃よりもさらに前から飼料にこだわり、健康な牛を育てることで安心して飲んでいただける牛乳をみなさんにお届けしてきました」

そう話す脇坂さんが現在、飼育する乳牛は約90頭。肉牛と合わせて全体で約300頭の牛と関わる日々を送っています。一方、これからグリーンコープの牛乳を生産する(株)耶馬渓ファームがめざすのは、1,000頭規模。他に類を見ない新設の大規模牧場で、脇坂さんはスタッフたちをとりまとめる役を担うこととなります。

それでも、
「もちろん、不安はありますが、こだわりたい部分はこれからも同じ。だから今はワクワクする気持ちの方が大きいんです」
と、その姿勢はあくまでも自然体のまま。

「まずは、飼料へのこだわり。引き続きnon-GMOであるとともに、できる限り地域の原料を生かしたものをと考えています。そしてもう一つは『長命多産』。健やかに長生きする牛を大切に育てることは、牛のためにも生乳のためにも良いことだと思うんです」

そしてなにより、脇坂さんが最も気になる「健やかに育てる」ためには、「毎日牛をしっかり観察すること」。

「近年はとくに異常気象の影響で寒暖差が激しい日も多く、牛にとってもストレスがかかることが増えています。頭数が増えることで、最初はトラブルが起きるのは折込済みです。一頭一頭に向き合う姿勢は守り、早く安定的に組合員さんに耶馬渓の牛乳をお届けできたらと思っています」

急ピッチで造成を続けている新牧場「耶馬渓ファーム」は、脇坂さんの農場のほど近く。その方向を見やりながら、脇坂さんは最後にこう話してくれました。

「これからの牧場では頭数は増えますが、飼育方法は現状のように牛舎につなぐことなく、放牧に近い自由な状態になります。続けてきた餌へのこだわりはそのままに、さらに牛を健康に育てて、おいしい牛乳をお届けします」