酪農とともに、地域の未来を守りたい
−下郷農協の新たな一歩−

下郷農業協同組合 理事組合長│玉麻 (たま) 農夫男さん

大分県中津市耶馬渓町に拠点を構える下郷農業協同組合(以下、下郷農協)。現在着々と建設を進めている「耶馬渓ファーム」は、グリーンコープと下郷農協との連携によって運営されていきます。グリーンコープとは10年ほど前から米や野菜などの産直取引を行っている下郷農協ですが、これからは「あたらしい産直」の実践をともに行う、より深い関係性のパートナーとなります。

「もともと耶馬渓は、林業が産業の中心だった土地。山に囲まれ、農地が潤沢にあるわけではないこの場所で、小作人※だった小さな農家が集まって設立させたのが、この下郷農協です。そんな農民たちが、消費者とつながり、生き残っていくための差別化の道として『食の安心にこだわった生産を』との方針が長く受け継がれてきました。このような私たちの歩みとグリーンコープの理念とは、一致する部分がとても多いのです」

そう話すのは、理事組合長の玉麻 (たま) 農夫男さん。「身の丈に合った暮らしのなかで、健康で人間らしく生きる」、下郷農協のHPにも記されているこの言葉どおり、下郷農協は農薬や化学肥料に頼らない農業と、飼料にこだわった農畜産物の生産、そしてそれらを原料にした無添加食品の加工品を提供し続け、美味しく豊かな食を求める人々に愛されてきたのです。

しかし、日本各地の地方と同様に、耶馬渓でも生産者の高齢化や過疎化は深刻な状況に。だからこそ、今回の共生・循環型酪農プロジェクトには「大きな期待をもっています」と、玉麻さん。

「たとえば、下郷農協のあるここ八幡地区の人口は、3、40年前に比べ半数以下になっています。農家だけでなく商店も減り、ここに住む人の不便はどんどん増しているのが現状です。下郷農協の経営も窮地に立たされていた、そんな状況のなか、今回のプロジェクトで多くの人がこの地域で酪農や牛乳の生産に関わっていただけることは、農協の存続だけでなく、地域そのものが活気づく、そのきっかけになると確信しています」

耶馬渓ファームの完成と本格稼働の日に備え、すでに複数のグリーンコープ職員が耶馬渓へと通い、下郷農協の生産者のもとで酪農の基礎を学んでいます。さらにグリーンコープTMRセンターから酪農家への飼料の供給もはじまり、少しずつ、しかし着実に、地域の日常が動き初めています。

「鮮度も容器も、飼料へのこだわりもさらに充実した耶馬渓発の『産直グリーンコープミルク』を、一日も早くグリーンコープのみなさんにお届けできるように。そして、将来にわたってこの地域が食料生産基地として残っていけるように、組合員一丸となって取り組んでいきます」

※土地を持たず、地主から耕地を借りて農作物をつくる農民の呼称。昭和の農地改革により小作料制度は廃止された