佐伊津有機農法研究会のメンバー
会長 田崎稔さん(中)、 理事 大仁田繁利さん(右)、田中圭造さん(左)
グリーンコープが進める「産直びん牛乳と共生・循環型酪農プロジェクト」。牛の健康を守り、おいしい牛乳を届けるとともに、地域の資源を活かした取り組みも進めています。その中で大きな役割を担っているのが、牛の飼料となる稲やとうもろこし、牧草を育てる生産者たちです。佐伊津有機農業研究会(以下、佐伊津有農研)は、まさにその一翼を担う存在です。
熊本県天草市に拠点を置く佐伊津有農研。約30名の生産者が集まり、減農薬や有機栽培による野菜づくりに取り組んでいます。その7〜8割をグリーンコープに出荷し、組合員の食卓に安心・安全な農産物を届けてきました。グリーンコープとのつながりは30年におよび、長きにわたり信頼を育んできたパートナーです。
有機農業には困難がつきものです。近年の猛暑や異常気象による収量減、資材価格の高騰など、農家を取り巻く環境は厳しさを増しています。それでも佐伊津有農研は、グリーンコープと栽培計画を共有し、再生産価格の設定で支えられてきました。また理解ある組合員に支えられることで「安心・安全はもちろん、さらにおいしい野菜を組合員に届けたい」という思いを実現しています。
土づくりからはじまる循環型農業
「有機農業はまず土づくりから始まります。牧草や緑肥を畑にすき込み、畜産からの堆肥を投入することで、肥料に頼りすぎずとも作物がよく育つ土をつくってきました。そこで育った野菜は味わいが深く、安心して食べてもらえるものになります」と大仁田理事は語ります。
以前から地域の堆肥センターや養豚農家からの豚糞も受け入れ、農業と畜産を循環させる仕組みを整えてきましたが、ついに今回の酪農プロジェクトでは飼料稲の生産に着手し、今後は牧草栽培にも挑戦していく予定です。
食を守り、未来へつなぐ
農家の高齢化が進むなか、後継者確保も大きな課題です。しかし佐伊津有農研では役場や学校を辞めて実家の農業を継ぐ者、新規就農者として新たに加わる生産者も現れました。従来の産地で生産が難しくなった作物を引き継ぎ、新たな品目に挑戦する動きも広がっています。「農家が生活できる所得を確保できれば、若者が農業に魅力を感じ、後継者も育っていくはず」と語るのは田崎会長。
「農家がいなくなれば食べ物もなくなる。その危機感が私たちを支えています。理解ある組合員とともに循環型の仕組みを守り、元気な農業を続けていきたい。これからも牛にとって健康な飼料をつくり、喜んでもらえる野菜を届けていきます」
長年の取り組みと新たな挑戦。その両輪で、佐伊津有農研はこれからも地域に根ざした有機農業を守り、未来へとつなげていきます。