グリーンコープの産直びん牛乳
酪農経営の大きな課題は「飼料」です。現在の酪農の危機は「飼料の高騰」によって引き起こされています。それは、酪農における最大のコストが飼料代だからです。酪農経営では「乳飼比」を制御して、効率よくすることが重要です。「乳飼比」は人間で言えば「エンゲル係数」です。北海道の酪農は自給粗飼料を豊富に生産することが出来るので、「乳飼比」は20〜30%、北海道以外の場合は購入飼料が中心となるため「乳飼比」は50%前後、と言われています。2022年度から「乳飼比」は90%を超えたりしています。
2020年度後半から輸入飼料が大幅に高騰しているため日本の酪農は危機的状況です。例えば、輸入粗飼料は1トン4万円前後だったものが7万円程度(175%)まで値上がりし、輸入原料(穀物)の値上がり(1トン3万円程度から1トン6万3千円程度に値上がり)によって、配合飼料は、1トン6万5千円程度だったものが10万円(154%)に値上がりしています。
酪農を成功させるため、産直びん牛乳事業を成功させるために重要な要素の一つは、飼料を国産で確保することと、飼料の価格を自分たちでコントロールして、抑えることが出来ることです。したがって、飼料代を最大限に自分たちでコントロールできるように、TMRセンター(完全混合発酵飼料の製造工場)を建設しました。TMRセンターは様々な飼料原料を配合して、搾乳のために必要な栄養を設計して飼料を製造します。TMRセンターで適切な栄養管理の上で完全に配合された飼料が作られることによって、乳牛の体調、搾乳量、生乳の質を安定させることにつながります。
グリーンコープでは、産直青果・産直米の生産者の皆さんへ飼料作物の生産を呼びかけました。また、飼料作物を生産する新たな農家との出会いもありました。サイレージ用トウモロコシ、WCS(醗酵飼料稲)、通常は乾燥牧草として輸入しているイタリアンライグラスなどの牧草を生産します。近年の飼料価格は、輸入原料の配合飼料であれば、令和3(2021)年頃までは1トン当たり7万円だったものが令和4(2022)年には1トン当たり10万円まで高騰していますので、自給する飼料を増やすことで輸入乾牧草を減らすことが出来て、飼料代を削減することに大きく貢献します。また、TMRセンターの飼料を利用することによって、酪農生産者は飼料を作る労力・コストが減少します。飼料を給餌する労力・コストも大きく軽減されます。
2024年10月に稼働を開始したTMRセンター。稼働初日に長谷川センター長を取材しました。
飼料づくりは初心者の鳥越社長。経験が浅い中、悪戦苦闘しながらも懸命に取り組まれています。